こんにちは。四辻木材の四辻誠悟(ヨツツジ セイゴ)です!
いよいよ12月、通称『暮れ』が始まりますね。まわりが忙しいからといって気にせんときましょうね。リラックス、リラックス。
今回話したいことは、『常識を疑え!』という話です。
目次
先日このようなツイートをしました。
10年前に植えた杉は、シカにボロボロに食べられても、食べられても、身長以上に育っていた。『シカに食べられたらもう終わり説』
を盲信していた。おっさんの思い込みが噂になって雪だるま的に大きくなったものだと思います。 pic.twitter.com/8AVsj6COci
— よつつじせいご@日本一おもしろい木こり (@4224jp) 2018年11月15日
私が林業の世界に入って、まだ3年目くらいの駆け出しの頃に植えた杉の木。
近くまで来たので、久しぶりに様子を見てきました。
林道や作業した道は、台風で壊れていましたが、杉の木は私の背丈をこえて、元気よく青々と育っていたんです。
ほんまに嬉しかった。
その反面、申し訳なかったと、頭が下がりました。
なぜならば、この杉の木たちは、鹿に食べられて皮を剥かれてボロボロにされてしまい、一度見捨てられた杉の木だったからです。
以前にこちらにも書きましたが、鹿は常に餌を探しています。
木を伐採したあとに防護策(通称:鹿ネット)を張り巡らせて植林をしますが、およそ2メートルのネットでも乗り越えてきます。
鹿が入ったらあとは、野うさぎやキツネ、イノシシ、クマと山の動物がどんどん入ってくる。
当然、植えたばかりの苗木はやられます。
『鹿が植えた木のてっぺんを、遠慮なく食べて、その酸性の唾液が苗を腐食させ、枯れてしまう』
植えた当時は、この噂が常識でした。
ベテランの先輩の長い経験の常識から教わりました。
私は少し鵜呑みにしすぎていたのかもしれません。
『もう林業なんて、いま立っている木を伐ったら終わりや、循環なんかせえへんのや、先あらへんのう、商売変えせなのう』
木を伐ったら終わり、鹿に餌をやっているという表現が、気持ちを落ち込ませました。
大勢のメンバーで、汗をかいて時間かけて一本一本植えた木を根こそぎ食べて行く鹿たちを憎みました。
できることなら鹿を捕まえて怒ってやりたいですが、このままでは腹がたつだけで、なんの解決にもなりません。
夏を迎え、仕事師さんたちに苗木の周りの雑草をかる“下草刈り”作業をしてもらいました。
作業が済み、様子を見にいくと、新芽が出ていて、大きく育っていました。
なぜか、枯れていませんでした。
なぜ枯れたのなかったのか?
確実なことはわかりませんが、いくら酸性の唾液やったかて、雨で流れてしまうと思うんです。唾液が流れ運良く枯れなかった木は、雪で倒れないように棒に固定して、もう一度下刈りすると、植えた木はしばらくほっといていい状態になります。
これから先は、
『大きくなってるけど、途中で枯れる』
『頭が分かれて、ロクでもない木になって、植えた意味なくなる』
というこれまでの常識の壁があります。
常識を乗り越えて、私の背丈より大きく育ってくれるのを待つのみ。
今回、私が学んだことは、
『これまでの常識を一度、疑うことも大切』ということです。
これから育つ木の成長は、私たちの常識では測れないことがあって、まだまだ未知の可能性があります。
この先、若い杉がどう育つかは分かりません。
けれど、今日まで木と呼べる状態までに育っている事実があります。私は自然の底力を感じて、木を伐り植えて続けていきたいです!
皆さんのお仕事をされてる業界にも、昔から伝わる常識があると思うのです。
『なんで?』『なんで?』を突き詰めて、『そういうもんやねん』てなっているところは、どんどん疑ってみると大切なものがみつかるかもしれません。
そして何より大切なのは、私たちの世代が植えた木を、次の世代に引き継いでもらうことが私のミッションです。