親御さんなどから山を引き継ぐことになった、もしくはこれから山を引き継ぐ予定があるみなさま、このような悩みはありませんか?
などなど。
・・・そのようなお悩みを持つみなさまへの記事です。
こんにちは。
京都府の京北(けいほく)地域でキコリをしている株式会社 四辻の四辻誠悟(よつつじせいご)と申します。
日々の仕事で山に関する悩みをお受けする立場として、引き継ぐ山のことで何を知っておくべきか、まず何から手をつければよいか、整理しました。
四辻 誠悟
祖父の代から京都で林業を営んでいます。「山を循環させ次世代につなぐこと」が使命。ブログ・SNS・イベントなどで林業のことを日々発信しています。
「山のことをなんとかしなければ・・・」とは思うものの、仕事などで忙しかったら、悩むのもムリはありません。
でもご安心ください。
全体のイメージさえつかめれば、何をすればよいかが見えてきます。
専門家に相談するときにも話が理解しやすくなるでしょう。
林業・キコリ歴18年の経験をふまえて、できる限りわかりやすくお伝えします。
少し長くなりますが、気になる部分からでもお読みいただければうれしいです。
目次
山(土地)を持っている人のことを「山主(やまぬし)」といいます。
山のあるじです。
土地を持っている人が地主と呼ばれるのと同じですね。
山を引き継ぐことになった(山主になった)場合、いろいろな活用方法が考えられます。
でもどう活用するにしても、最初にやらなくてはならないのが「山の状態を知ること」。
ご自身の山の状態を把握できていないと、活用のしようがありません。
山が今どのような状態になっているか、どのくらいの広さ(面積)があるか、木はどのような状態か(価値があるか)、などを調査することが最初のステップとなります。
山の調査は、専門家である事業者にお願いをします。
などなど。
山主さんがご自身の山の状態を把握されていないケースは意外と多いです。
なんとなく把握されていたつもりでも、何十年もたつと状況が変わることも。
山主さんが引き継いだ山は、親御さんたち先祖が後世を生きるわたしたちのために植えた大切な資産。
大切な資産も、何もせずほおっておくと価値が下がってしまうことをご存じでしょうか?
山は適切な管理をして価値を保ち、資産に変えるなど、適切なタイミングで活用するのが大切です。
山を調査した結果、木が売れる状態であった場合は、山主さんは現金収入を得られます。
山を活用して利益を得る方法としては他にも「山(土地)を売る」こともあります。
大切な選択肢の1つですが、説明が少し複雑になるため別の機会に書く予定です。
ここではわたしの会社のメイン事業でもある、木を売って利益を得る「立木売買」についてご説明します(わたしたちからすると「立木買取」とも呼びます)。
立木売買は、専門の事業者が山主さんの山に入り、木を切って運び出し市場に売ることで、お客さまに現金収入を得ていただくもの。
現金収入が得られるため、立木売買はよいことだらけのように思う方もいらっしゃるかもしれませんが、メリットとデメリットを理解しておきましょう。
いちばん気になるであろう、大切なお金のことです。
山主さんが引き継いだ山の木を売ることによって利益を得られれば、さらに次の代へ受け継ぐことが視野に入ります。
木を切ったあとも適切に山を管理することで、資産の価値を保てます。
さらに木を売って得た収入(山林所得)は、税金の控除も対象となります。
山林所得の計算(概要)
※山林を5年以上所有していることが条件です
詳しくは以下をご覧ください。
参照:山林の伐採・譲渡に係る特例《所得税》|林野庁(PDF形式)
子供や孫など、次の世代や未来のためにできることですね。
適切な山の管理は自然環境の維持と、地元産業の継続につながります。
たとえば若い木を植えることは、地球温暖化防止につながり、森林は緑のダムと呼ばれるように、水資源を蓄え、育み、守る役割を担います。
今すぐには難しいですが、100年〜後の次の世代では、世界では水資源が少なくなり、大変貴重になっていくとも言われています。
個人の力はたとえ小さくとも、ひとり一人が環境問題に向き合い行動することが持続可能な社会につながると、わたしは信じています。
今後、脱炭素が盛んに取り組まれていくにつれ、順応していけるよう私も新たに学ばねばなりません。
山を手放すわけではなく維持するので、契約や手続きなどのコストが発生します。
立木売買後は5年に1度、事業者と「委託契約」を交わすことが必要です。(令和4年8月現在)
宅地などの不動産と比べると安いですが、固定資産税も事前に把握しておきましょう。
「固定資産税評価額 ×1.4%」で算出されます。
(※固定資産税評価額は、市役所などで確認)
また国が指定した水源地の確保、崩れたら危ない山林は「保安林」として課税されません。
「保安林」は伐採搬出後は必ず植林する義務があります。
全体としては以下のような順序で進みます。
ただこれでおわりではなく、その後の管理も必要です。
立木売買後に植林をし、そのあとも引き続き山の管理をするには、「造林委託契約」という契約(5年間)を専門事業者と結ぶことが必要です。
この契約は国からの補助金(参照:森林環境保全直接支援事業|林野庁「森林整備事業のあらまし」(PDF形式))を利用するため、山主さんの負担はありません(令和5年4月現在)。
山の価値を維持するためにも、わたしたちもオススメしています。
「造林委託契約」を結んだあとの5年間の流れは以下のとおりです。
さらにこのあと6年目以降にどうするかも、大切なポイントです。
社会の状況を見ながら、お客さまにできる限り利益が出せる計画を提案させていただいております。
補助金なども関わっており一概にいくらとはいえませんが、お客さまの利益をなるべく確保できるよう提案します。
以下の記事では、例として具体的な数値を出しています。
この記事の場合は、現在の単位に換算すると「木の体積 1㎥あたり10,000円」で売れ「経費が7,000円」でした。
農林水産省のページにも相場が公開されています(参照:木材価格統計調査|農林水産省(外部リンク))。
ただやはり正確な金額を知るには専門業者にお願いするのが確実ですし、早いです。
お見積には1本ごとの木の確認が必要ですし、木の搬出にかかる経費は現場によって大きく変動するためです。
お見積書の他にも、地図・位置図・調べる際に閲覧した登記情報など、今後ご自宅で保管できる資料を作成します。
税金のことも抑えておきましょう。
山林所得は、他の所得と合計せず、他の所得と異なった計算方法により税額を計算し、確定申告することになります。
<山林所得の計算方法>
総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)=山林所得の金額
<税額の計算方法>
(課税 山林所得金額 ×5分の1× 所得税率) × 5
<例>
山林所得 500万円だった場合・・・税額 25万円
100万(500万×1/5)の所得税率は5%
100万×0.05×5=25万
立木売買に必要な書類は以下のとおりです。
まずご用意いただきたいのが
です。
こちらで「地番」が確認できれば、お見積もりまで対応可能です。
立木売買を検討する場合、選択肢としては主に
となります。
森林組合さんは、森林をお持ちの山主で組織された協同組合です。
全国に600以上あり、地域によって事業や状況は異なります。
民間の事業者は、わたしたちのような民間の会社になります。
どちらがよいのでしょうか?
森林組合さんも民間事業者も、作業の質や料金に違いがあり、どちらがよいという答えはありません。
山主さんの所有されている山林ごとにも正解は異なります。
地元の森林組合さんや民間事業者についてWebサイトなどで調べ、電話などでお問合せした上で比較するのがオススメです。
とはいえWebサイトだけだとわかりにくい点もあるでしょうし、何を基準に検討すべきかわからない方もいらっしゃると思います。
そこで以下のポイントを意識してご確認ください。
(1)〜(4)は基本的なところかもしれませんね。
(5)は差別化のポイントになりやすいです。
実際には契約後にわかることも多いため、信頼できる対応をしてくれそうかが、事業者選びで失敗しないポイントです。
全国の山主のみなさまがよい事業者に出会えるよう、京都の山奥から願っています。
最後に、わたしたちのことをお話しします。
あらためて、京都府の京北地域でキコリをしている株式会社 四辻の四辻誠悟です。
業界以外の方にとっては何かとわかりにくい林業。
そのハードルをなくすため、まずはじぶんが行動しようと日々ブログなどで情報を発信し、山主さんたちに説明を続けてきました。
少しずつ、セミナーやメディアなどにお話しする機会も増えてきています。
おかげさまで、山主さんからありがたいお言葉もいただいています。
年/月 | 内容 |
---|---|
2024/2 | テレビ 「ウィークエンド関西」※番組内の「京いちにち」コーナー内に出演(※NHK総合 関西域向け放送) |
2024/1 | テレビ 「ぐるっと関西おひるまえ」(短縮バージョン) |
2023/7 | セミナー/イベント ひらたみのる×四辻誠悟 『二人展-海と山の物語-』 |
2022/6 | セミナー/イベント 京都市立京都京北小中学校「特別授業」 |
2021/3 | テレビ NHK-World「CORE Kyoto」 |
2020/3 | セミナー/イベント 西陣産業創造會舘「私は京都で、クラフト作家になる。」ものづくり、ものがたり。 |
2019/9 | セミナー/イベント From surfing to traditional crafts「木製サーフボード・ワークショップ」 |
2019/9 | セミナー/イベント 京都「お箸づくりWORK SHOP」 |
2019/5 | セミナー/イベント 大阪「TSUNAGARA NIGHT VOL.5」 |
2019/5 | セミナー/イベント 京都「Material Meetup KYOTO vol.2」 |
2019/2 | 本/冊子 公益社団法人京都府林業労働支援センター「Kyoto Forestry Magazine vol.1」 |
2019/2 | 本/冊子 京都市産業観光局『KEIHOKU SATOYAMA WORK』 |
熊が皮をはいで(クマ剥ぎ)表面が枯れた木などを利用し、商品にするプロジェクトです。
「クマ剥ぎで価値が減ってしまった木を、商品にできないか?」とセミナー等で話続けていたところ、ありがたいことにご縁があり、知り合った仲間とスタートすることができました。
現在、商品開発中で販売に向けて準備しています。
インターネットで四辻さんのブログを拝見したことがきっかけでお願いしました。
こまめに更新されており、会社のことについてイメージがしやすかったです。
木によって異なりますし、毎回変動するので一概には言えません。私たちが木材市場に持って行って、買ってもらうのは杉や桧などの針葉樹です。
市場で一本ずつサイズを測ってもらい、体積(立方メートル)を出して、競り売りしてもらいます。全国に相場があり、毎回変動するのですが、私たちが出品している市場では元木(根元の部分)が現在1立方メートルあたり平均1万円くらいになっています。
いいえ、自然破壊になりません。
自然破壊になることを懸念し、何もせず放置すると次のようなことが起きます。
木が倒れると山が崩れます。すると木と土の土石流が発生して災害が起こります。木が倒れた山は水を蓄えられません。山が蓄えていた水が土石と一気に山間の集落〜都市部に流れ、鉄砲水や浸水といった被害がでます。山が天然のダムになって人が住む場所を守ってくれていると考えて欲しいです。
山の木にも寿命があるので雪や台風で倒れます。倒れる前に伐って使うことによって、山主さんも収益を得て、また子孫のために植えよう。そういう伐る→植える→育てるを繰り返すことで森林を更新していき、次世代の人達のために山の自然を繋いでいくことが大切です。
土地によって異なります。
その土地によって違うのですが、私たち用の地図、通称「施業図」上では基本的に、山の尾根、谷で区切られているケースが多いですが、あくまで所有者さん同士の話し合いで決まっています。また「境界杭」と呼ばれる赤い棒を地面に打ち込み目印にされている所もあります。
木を植えるor植えないは、持ち主である山主さんの意思を尊重します。
現在の状況では、伐採する時に森林組合さん等で申請が通ると、木の苗と防鹿ネットにかかる費用を国からの補助金を受け取り植えることができます。(手続き申請は弊社で代行させていただきます。)
また山には国が指定した「保安林」という分類の山があり、この山の木を伐ると必ず植える義務があります。水源であったり、放置すると土砂災害の原因になるような重要な位置にある山だからです。これは法律で決まっています。
私たちとしては未来の山にも木が育っていてほしいので、木を植えたいですし、植えていただきたいと思っています。
木は、木材市場で売ります。
私たちが山から搬出してきた木は、(株)北桑木材センターで売ってもらいます。
よくテレビで魚や野菜の競り売りを見ませんか?あれと同じようにオークション形式で、材木屋さん、製材所さん、工務店さんなど様々な業者さん(通称:買い方さん)に売られていきます。詳しくはこちらのYotsuTubeで競り売りの模様が見られます。
基本的にヒノキの方が高価ですが、その時の需要と供給のバランスで変わるので一概には言えません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これまでのお話のとおり、先代から引き継ぐ山について、何もしないと価値が下がる恐れがあります。
資産をきちんと受け、次世代へつなげるためにも、早い判断をするに越したことはありません。
山の専門家に相談し、最適な方法を考えていくことが大切です。
山のことで何かわからないことがありましたら、以下のお問合せフォームかお電話にてお気軽にご連絡ください。
日中は作業をしていることが多いため、以下フォームより、電話してよい時間帯をご連絡いただければと思います。
弊社の対応が可能なエリアは、京都市全域、南丹市(美山町、園部町、八木町、日吉町)、船井郡(京丹波町、和知町、瑞穂町)とさせていただきます。
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