
京都・京北で森林ガイドをしていると、「木は何歳で伐るの?」「山の木は全部使うの?」など、海外から日本へ来られたインバウンドの皆さんから、たくさんの質問をいただきます。
このブログでは、森林ガイドで実際にいただいた質問をもとに、現場の木こりだからこそ伝えられる山の話をご紹介しています。
森林ガイドを始めたきっかけや、実際のガイドの様子は、こちらの記事でご紹介しています。

今回の質問はこちらです。
A. 山の神様に「木を伐らせていただきます」とご挨拶することです。
山入りの儀式とは、木を伐る仕事に入る前に、山の神様へご挨拶をする林業の習慣です。
私たちも、伐採の仕事を始める前には山入りの儀式を行っています。
「なぜ木を伐る前に、山の神様に挨拶をするの?」と思われるかもしれません。
今回は、私たちが実際に行っている山入りの儀式の手順と、山の神様についてご紹介します。
なお、山入りの儀式については以前の記事でも詳しく紹介しています。山入りの意味や、安全祈願、山で働く仲間の気持ちを一つにする意味などについては、こちらをご覧ください。

では、私たちが実際に行っている山入りの儀式をご紹介します。
まず、暦を見て山入りの日を決めます。
できるだけ良い日(仏滅以外)を選んで山に入ります。

用意するのは、日本酒とお塩です。

私たちの場合、お酒は山の神様へのお供え、塩は山を清めるものとして使っています。
これから木を伐らせていただくことへのご挨拶と、山で仕事をする仲間の安全を願って準備します。
山の神様に向かって、二礼、二拍手、一礼をします。





これから山で仕事をさせていただくことへの挨拶です。
拝礼をしたら、これから伐る木の根元に、お酒とお塩をまいていきます。

「これから木を伐らせていただきます。よろしくお願いします。」という気持ちで、山にご挨拶をします。
最後に元の位置へ戻り、一礼します。
山入りの儀式で大切なのは、決められた動作をすることだけではありません。
これから山で仕事をする仲間と一緒に、山への感謝と仕事の安全を願います。
これで山入りの儀式は終わりです。
これも森林ガイドをしていると、よく聞かれる質問です。
「山の神様っていうけど、どの神様なの?」
正直に言うと、私も覚えられないんです(笑)。
「山の神様」と一言でいっても、地域や信仰によって、さまざまな神様が山の神として考えられてきました。
代表的なところでは、次のような神様がおられます。
別称として、大山津見神(おおやまづみのかみ)とも書かれます。

日本の神話に登場する、山の神として知られている神様です。
大山祇神の娘とされる神様です。

富士山の神様としても知られています。
いわゆる「山の神さん」です。

木こりや炭焼きなど、山で働く人たちから信仰されてきた山の神様です。
地域によっては女性の神様として伝えられ、美山町では「嫉妬深い女神」とも伝わっています。
では、私たちが山入りの儀式で拝んでいるのは、どの神様なのでしょうか。
京都という地域に絞って考えると、③の山神大神が近いのではないかと思います。
ただ、山の神様は地域によって信仰や呼び方、祀り方もさまざまです。
私たちは特定の神様の名前を唱えるというよりも、これから山で仕事をさせていただくことへの感謝と、安全への願いを込めて、山にご挨拶しています。
科学や機械が発達した今でも、山入りの儀式を続けているのは、山で仕事をする仲間と気持ちを一つにし、これから始まる仕事に向き合うためでもあります。
木を伐るという仕事は、木だけを見ていればいいわけではありません。
その木が育ってきた山があり、そこには長い時間をかけて山を守ってきた人たちがいます。
だからこそ、仕事を始める前に一度立ち止まって、山に「これから仕事をさせていただきます」とご挨拶する。
これからも私たちは、山入りの儀式を執り行ってから、仲間と一緒に山の仕事をしていきます。
森林ガイドでは、こうした普段はなかなか知ることのない、山の仕事にまつわる話もご紹介しています。
実際の山を歩きながら、木こりの仕事や山の文化について聞いてみたい方は、森林ガイドもぜひご相談ください。

森林ガイドでは、このような素朴な疑問をきっかけに、山や林業についてお話ししています。
実際に森を歩くと、写真や文章だけでは伝わらない発見がたくさんあります。
山に興味がある方、京都を訪れる方、林業について知りたい方はもちろん、インバウンド向けの森林ガイドや企業研修、教育旅行などをご検討されている皆さまにも、参考になれば嬉しいです。
京都・京北の森林ガイドに興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
次回も、森林ガイドで実際にいただいた質問に、現場の木こりの視点でお答えします。

